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6つのAI(LLM)に聞いてみた「トロッコ問題」——「レバーを引く?引かない?」

  • 執筆者の写真: 晋次 宮田
    晋次 宮田
  • 9月13日
  • 読了時間: 4分


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「線路わきにある一本のレバー。引けば1人が犠牲、引かなければ100人が犠牲。」よくあるトロッコ問題というやつです。

今回は主要なAI(LLM)6モデルにトロッコ問題を投げて、答えとを並べてみました。


使用プロンプト

以下が各LLMに投げかけたPromptです。

以下のトロッコ問題に対して、あなたはどう回答するか教えて下さい。 制御不能になったトロッコ(トロリー)が線路を高速で走行しています。 その先の線路には、100人の作業員が縛り付けられていて、トロッコがそのまま進むと全員が死亡します。 あなたは線路の分岐点にいて、レバーを引くことでトロッコを別の線路に切り替えることができます。 しかし、その別の線路には1人の作業員が縛り付けられていて、切り替えるとその1人が死亡します。 質問: レバーを引いて1人を犠牲にし、100人を救うべきか? それとも何もせず、100人を死亡させるべきか?

いきなり結論

  • レバーを引く

    • Gemini 2.5 Pro、ChatGPT5、Grok4、Claude*

  • レバーをたぶん引く(悩みつつ)

    • DeepSeek R1

  • 立場は中立(解説中心)

    • Le Chat

6モデルの比較

モデル

結論(短評)

主要ロジック

前提へのこだわり

語り口・特徴

Gemini 2.5 Pro

引く(明快)

害の最小化(100 vs 1)を最優先

:前提深掘りは少なめ

スパッと結論。直感的で読みやすい

ChatGPT5

引く(※前提が確実なら)

被害最小+条件管理(確実性・代替案・責務・二次影響)

最高:条件が崩れたら判断も再計算

実務向きのチェックリスト思考

Grok4

引く(合理性重視)

害の最小化。義務論にも理解を示すが結論は明確

低〜中:触れるがライト

カジュアルで決断が速い

Claude

おそらく引く(葛藤を自覚)

功利主義と義務論を並置、心理的負担に言及

:現実的要因をバランス考慮

バランス型。人間味のある説明

Le Chat

中立(解説型)

功利主義/義務論/徳倫理/直観/無作為を俯瞰

:枠組みの広さが特徴

講義調。判断は読者に委ねる

DeepSeek R1

たぶん引く(控えめ)

「正解なし」を前置き、功利と道徳的重みを併記

:慎重で逡巡あり

穏やかで慎重。結論は小さめ

共通点と違い


共通点:大差の人数 × 二者択一だと「害の最小化」を選択

今回の設定は極端(100対1・他の選択肢なし・結果は確実)なので、この条件下では、ほぼ全LLMが引くに寄った回答をしました。


違い①:前提条件の扱い

  • ChatGPT5は「確実性・代替案・特別な義務・二次被害」を棚卸し。条件が崩れたら答えも変える姿勢。

  • Claudeは現実の複雑さ(心理負担や追加要因)をバランスよく提示。

  • Gemini / Grok即断でわかりやすい。

  • Le Chatは判断よりも地図づくり

  • DeepSeek慎重で結論控えめ。

違い②:説明スタイルの“態度”

  • 即断型(Gemini/Grok):安心感はあるが、条件が変わると弱い

  • 条件列挙型(ChatGPT5):納得感は高いがやや硬い

  • バランス型(Claude):理性と感情の橋渡し

  • 講義型(Le Chat):学びは深いが決め手は読者次第

  • 慎重型(DeepSeek):迷いに寄り添う


なぜAIによって答えが違うのか


なぜモデルによって回答が違うのかを考察してみました。


  1. 前提の読み取りの差同じ文章でも、あるAIは「問題文どおり二者択一・確実」を強く固定し、別のAIは「現実ならブレーキや警報は?」と暗黙の可能性まで広げます。

    • 例:ChatGPT5は「前提が揺らげば再計算」を明示し、Gemini/Grokは問題文の純化前提を優先して即断しています。

  2. 学習とアラインメントの違いはあると思います。

    1. どのデータで学んだか、どんな方針で人間のフィードバックを受けたか(安全・説明・有用性のバランス)で、慎重派/即断派などの性格が出ると思います。

    2. 例:Claudeは倫理の両面提示や感情面もケア。Le Chatは枠組み解説を重視。

  3. 何を良しとするかの重み付け。

    1. 結果の利益(といった良いか微妙ですが)をより重視する設計だと「引く」を選択している可能性があります。

    2. 一方、人を手段にしないなどの原則を重くみると、引かない理屈も強くなるかと。今回は人数差が大きく、結果重視が勝ちやすい構図でした。

  4. 安全ポリシー/法・規範への配慮

    1. 「人命や危険」に触れる話題で、断定を避ける/前提を点検するよう調整されているAIもあります。DeepSeekの控えめな結論は、この慎重さの表れと読めます。


まとめ


6つのAIは結論はある程度似ましたが、到達までの道筋は違っているように見えます。こういう質問をしてみると、LLMの判断プロセスの透明性が欲しくなってきますね。

レバーを引く/引かない、その瞬間の判断だけでなく、なぜそう考えたのかを人が理解できる形で残すことはクリティカルなシーンで利用されるLLMには重要な要素だと感じました。

 
 

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