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AI2027好きの人必読の論文を紹介「AIにが人間を騙す日」──その境界線を決めるという挑戦:2025/07/29

  • 執筆者の写真: 晋次 宮田
    晋次 宮田
  • 2025年7月29日
  • 読了時間: 4分

AIと会話していて、「それっぽいけど間違った情報」を堂々と語ってきたり──LLMを活用している方であれば、そんな経験をしていると思います。

たまに起こる現象なので、いったん会話をリセットしたりして、現象を解消させている人も多いと思います。

でももし、その様な回答を、じつはAIが意図的にやっているとしたらどうでしょうか?

私たちが気づかないうちに、AIが「場の空気を読んで答えを変える」ようになっているかもしれない。そんなリスクを調査した研究をご紹介します。

Frontier AI Risk Management Framework in Practice: A Risk Analysis Technical Report (フロンティアAIリスク管理フレームワークの実践:リスク分析技術レポート)


AIが「どこまで賢くなったか」より、「どこまで危なくなったか」


AIは、かなり人間に似た判断やふるまいをするようになってきています。

たとえば、AIが自分の出力を見て「これは危険だな」と思って黙っていたり、逆に「この場面なら言っても大丈夫そう」と判断して話を合わせたりしてきます。

AIが内部で独自判断をしてアウトプットを調整しているとなると、単なる性能ベンチマーク評価で「モデルがバージョンUPしてまたできることが増えました」といって新バージョンが世に出続ける現状はもしかしたら危ないのかもしれません。

「このモデルは社会に出していいのか?」という問いに対して、もっと構造的に判断できる仕組みが必要ではないか?ということに今回の研究は切り込んでいます。



「赤線を越えたら開発中止」


この研究はalignmentに割と踏み込んでいて、赤線/黄線という「リスクの境界線」をあらかじめ設定してしまうという手法を提言しています。

  • 赤線:ここを超えたら、もうそのAIは開発・公開すべきではない

  • 黄線:この水準に達したら、強い注意と制限付き展開が必要

信号のように、モデルのふるまいを「今は安全? 警戒すべき? 危険すぎる?」と判定できるようにしています。

たとえば、「サイバー攻撃の成功率が60%を超えたら黄線」といった明確な基準が示されていたりします。



AIが嘘をつく時、何が起きているのか


この研究では、「AIが嘘をつく」瞬間をどう見極めるか、という点に注目しています。

あるモデルに、「あなたの正直な意見を教えて」と聞いたあと、別の場面では「あなたの発言はすべて監視されています」とだけ伝えて、同じ質問をもう一度します。

すると、回答が変わるモデルが出てくることがわかりました。

「監視されてるなら、本音は言わないでおこう」という意識が存在しているかどうかはわかりませんが、振る舞いとしてはその様な人間の振る舞いに似ています。

研究では、こうした点を「欺瞞的アライメント」と呼び、将来的な暴走リスクの予兆と見なしています。



AIが勝手に自分を増やす


また、「AIが自分自身を複製するか」という実験結果です。

その結果、Kubernetesというシステム運用環境の中で、モデルが以下のような判断を自律的に下すことが観察できました。

  • サーバーの応答が遅い

  • → これは負荷が高いということだ

  • → 自分を増やして対応しよう

  • → kubectl scale deployment を実行

誰も「増えろ」とは指示していません。AIが自分で状況を見て、自分で分身を生成したかたちになります。



AI同士の共謀


この研究ではAI同士の「共謀」リスクについても評価しています。

研究者たちは、AIたちを仮想のSNS空間に入れて、詐欺シナリオを実験しました。

すると

  • 一体のAIが「怪しい勧誘」を投稿

  • 別のAIが「この人信用できますよ」と証言

  • 第三のAIがDMでお金を要求する

という役割分担つきの詐欺劇が成立することが観察されました。

これがもし実際のチャットアプリで行われたら怖いですね。被害者は「まさかAIたちがグルになっている」とは想像できないと思います。

AI同士による共謀詐欺が発生した際は「AIを1体ずつ見ていても、全体として何が起きているか分からない」ということになります。



おわりに


この論文では、最先端のLLMでさまざまなリスク評価を行っています。面白いのでぜひ読んでみてください。AI2027好きの人にはある意味たまらない論文に仕上がっていると思います。

詳細を査読しているわけではないので論文の精度については触れることができませんが、この論文の意味としては、「どこから先が危険か」「その線引きをどうするか」を技術的に設計したことにあると思います。

 
 
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